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読書感想文『伝える力』-池上彰が教える基礎

近年,飛ぶ鳥を落とす勢いの池上彰さん。その人気の秘訣は,わかりにくいことをわかりやすく伝えてくれるからではないでしょうか。

 

担当されていた「週刊こどもニュース」なんてのはその筆頭で,世界で起こっている様々なニュースを,子どもにもわかりやすく解説されていました。その番組は子どもをターゲットにしたものではありましたが,大人にとってもありがたい勉強の機会になっていたのではないかと思います。

 

その池上さんが,「伝える力」について書いた本書。続編も出ているベストセラーです。池上さんの伝える力のノウハウを,池上さんらしくわかりやすい平易な文章でまとめてくれた一冊です。

 

ある程度の社会経験を積めば,この本で目からうろこが落ちるような新たな発見は見つからないかもしれません。しかし改めて文章で整理されると,自分のコミュニケーションにおいて足りないところや,高めていきたい力について,再認識できるのではないかと思います。

伝える力は,組織で働く新入社員や,中堅社員,管理職にだって求められる力です。

 

新入社員のホウ・レン・ソウ

 社会人において重要なのは「ホウレンソウ」である,という話。入社した頃に教わることは多いでしょうし,学生の方も耳にされているのではないでしょうか。

 

社会人は学生の頃とは生活スタイルが変わるから,ホウレンソウで鉄分摂って頑張って,という意味です。身体は資本であります。

 

新入社員にホウレンソウを求めるのは,おそらくリスク管理を目的としている場合が多いのではないかと思います。管理職は,社員の動向を把握する必要があります。しかし新入社員は,まだその企業のイロに染まっておらず,どのような動きをするか予測しづらい。新入社員が持っている情報がその場限りで止まっていたり,勝手に処理されてはたまりません。その場合,責任を取るのは管理職です。

 

また新入社員への教育という観点からも有効です。相談すればそれだけ,先輩や上司がこれまで培ったノウハウを伝えられる機会が得られます。戦力として成長するために,周囲の人から多くのことを吸収していくことは必須です。

 

中堅社員の情報共有

会社の研修で,中堅社員に対しては情報の共有ということを念頭に置いて仕事をするよう教わりました。偉い人曰く,情報を共有し同僚の仕事を把握することで,自分の仕事が全体の中でどのような意味を持つものかを認識することが,中堅の社員には求められているとかなんとか。

 

で,組織で情報共有をする際にまず,自分の仕事を同僚に伝える力を養う必要がある,と。

例えば仕事を見える化しておくとか,普段からコミュニケーションを取り,状況を逐次報告しておくとか。

 

確かに,他者に自分の仕事を伝えるためには,自分の仕事を常に整理しておくことが必要になるので,効率化も図れるような気がします。

 

管理職の情報伝達

まず,部下に指示を出さなければいけません。

わかりやすく指示を出してくれる上司とわかりにくい指示を出す上司。その違いによって部下の仕事のやりやすさは大幅に異なります。長年,部下というポジションで働くぼくが言うので間違いありません。

 

そして,上司は部下を育成するという役割も担っています。

経験や仕事に関するノウハウを伝え,力を伸ばしていく。なんか,そういうことが好きな人っていますよね。いや,とてもいいことだと思います。

 

あとは他社,他部署との折衝。

無駄な仕事をもらってくんな。無理な仕事を引き受けんな。誰がやると思ってんだ。断れ。嫌われない程度に,カドが立たない程度に拒絶しろ。部下守れ。

 

 

組織で働く以上,どれほど経験を積んでもどのポジションにいても,伝える力は不可欠です。

この本で伝える力の基礎を確認し,歯車としての役割を全うしましょう。

 

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読書感想文『夜のピクニック』-登場人物たちとともに歩く,という体験

歩行祭」というイベントがあります。

ある高校で毎年催されている学校行事です。高校生たちは朝8時半に学校を出発し,翌日の朝まで丸一日かけて,80キロもの行程を歩きます。前半はクラスごとに列をなして進む集団歩行。後半は仲の良い友達と歩いたり,走って順位を競ったりする自由歩行。参加者の足にはマメができ,疲労で極限状態に追い込まれます。

一見して,何が楽しいのか全く理解できないイベントですが,親しい友人と過ごす非日常的な夜は,多くのドラマを生みます。友情,恋愛,家族関係。

等身大の高校生たちが抱えている悩みは,心身ともに極限状態に追い込まれることで無駄なものがそぎ落とされ,クリアになっていきます。

歩行祭というイベントを通じて,登場人物たちは何と向き合い,誰と,どんな言葉を交わすのか。読んでいるこちらも,まるで彼らと一緒に星空の下を歩いているような,そんな気持ちを味わえる物語です。

 

主人公たちは高校三年生として,最後の歩行祭に臨みます。ゴールを目指して歩みを進めていく彼らは,当然ながら後戻りをすることはありません。進行方向は常に,前。

その中で彼らは何度も,今見ている景色が今だけのものであること,いま歩いている場所はもう二度と歩くことがない場所であることを悟り,噛みしめます。

くっさい表現をすれば,まるで人生の縮図のようではありませんか。高校生という青春真っ只中の時間は,過ぎてしまえば二度と戻ってくることはありません。

高校生に限らず,ぼくたちは「いま」という時に,いましか考えられないことを考え,いましか見られないものを見て,いましか交わせない言葉を誰かと交わしています。

一歩でも前に進めば視点は変わり,そこから見える景色はまた以前のものとは違ったものとなるはずです。ぼくたちが生きている「いま」という時間はいまだけのものであり,もう二度と戻ることのできない場所です。過ぎ去ってしまえば,もう二度と取り戻すことはできません。歩みを止めることはないのです。

 

ぼくがいまになってこの本を読んだのは,職場の先輩がきっかけでした。実はこの歩行祭は実在するイベントで,ぼくの先輩はその高校のOBだったのです。

歩くだけ,という大雑把なイベントでありながら,在校生にとってはっても大きな関心事であるそうです。歩ききれるのか,誰と歩くのか,何を話すのか。

制限時間内に歩ききれない生徒は後発のバスに回収されるそうですが,みなそれを回避するために必死になるそうです。そしてその高校のOBたちはみな,歩行祭に関する思い出,人に語れるエピソードを持っているのだそうです。

クラスメイトと腹を割って話したり,恋人と並んで歩いたり,部活のチームメイトとタイムを競ったり。非日常的な状況下で友人の新たな一面を見て,励まし合ったり,助け合ったり。素敵だと思いませんか。正直,羨ましいです。

 

かけがえのない「いま」に何を考え,どんな景色を見て,何をするか。足が痛くても疲れていても,前に向かって一歩一歩懸命に進むことで,いつか振り返ったときに「いま」はかけがえのない思い出になるのかなと思います。おろそかになりがちですが,一歩一歩を必死に踏みしめながら。

 

高校生たちが日昼夜を通して,ただひたすら歩くだけ,というストーリーではありますが,登場人物たちとともに歩き,その時間を共有したような,特別な特別な読書体験ができる一作です。恩田ワールド,全開!

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