![]() |
結婚して5年目の夫婦を襲ったのは、夫である「ツレ」(堺雅人)のうつ病でした。
会社に行けなくなり、体調も感情の波も不安定。そんなツレを懸命に支える配偶者の「ハルさん」(宮崎あおい)。
イグアナの「イグ」を加えた三人の家族が、うつ病と闘い、向き合い、受け容れるまでのストーリー。
細川貂々の同名のコミックエッセイを映像化した作品です。
作中でうつ病は「誰でもなる可能性のある、心の風邪」と表現されます。
誰でもなる可能性がある病気なのに、世間のうつ病に対する理解は足りていません。世間は奇異の目でうつ病になった人を見て、同情したり憐れんだり、反対に叱責したり無闇に励ましたり。うつ病がどんな病気か、うつ病になった人にどのように接するべきか、という点について、あまり認知されていません。
風邪、と表現するにはうつ病は余りにも人の心を蝕みます。休んでいるのに休めない。いままでできていたことができない。感情は大きな浮き沈みを繰り返します。その目に映る世界は、それまでのものとは一変しているのでしょう。日常に少しずつ絶望していく、おそろしい病です。
明るく楽しく暮らすハルさんの姿に救われますが、うつ病はとても辛く、重い病気です。うつになったツレの負のスパイラルは、隣にいるハルさんのメンタルをも巻き込んでしまうのではないかと、不安になりました。
「頑張らない」、「できないのではなく、やらないんだ」、「休むことが休みの宿題なんだ」と、ハルさんは暖かく天真爛漫に、うつ病になったツレを支えます。そんなハルさんにツレが救われたのは疑いようのない事実です。
そして物語の終盤、ツレが講演会で語る、うつ病が教えてくれたことについて語ります。それはきっと、この物語がすべての人に、そうあってほしいという願いを込めたメッセージなのではないでしょうか。
その健やかなときも、病めるときも、で始まる結婚の誓い。
言葉で言うのは易しいのですが、本当にその状況に直面したとき、どこまでその信念を貫くことができるでしょうか。ハルさんの見せてくれた理想の姿。同じようなことが、ぼくたちにもできるでしょうか。物語の後半、結婚式場でハルさんが語る言葉、夫婦が想い合う姿には、心を打たれました。
少しずつ壊れていくツレを演じた堺雅人の演技力は圧巻です。ひたむきなハルさんの姿を応援せずにいられなかったのは、宮崎あおいの魅力によるところも大きかったのではないかと思います。
結婚している人、愛する人がいる人、すべての人に、もう一度その愛と向き合うために。うつ病という誰にでもなり得る病気のことを知る端緒を得るために。
多くの人にオススメしたい作品です。
![]() |
新品価格 |
![]() |
新品価格 |