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読書感想文『アイネクライネナハトムジーク』-ぼくに残された出会いの可能性

本書のテーマは「出会い」でしょうか。あとがきにも書かれていますが、伊坂幸太郎作品おなじみの犯罪者や超能力者は登場しませんし、異質な世界を舞台にしたものでもありません。極々、普通のサラリーマンやOL、学生たちが主人公です。人との出会いを求め、再開に心を揺さぶられ、寄り添い合いながら生きていく。そんな暖かい物語です。

 

思えば、出たいというのは何とも儚く、運命的なものです。誰かが機械的に決めたクラス替えや異動は、本人にとってとても大きな意味を持ちます。ヤマ勘で選んだ試験問題の選択肢、気まぐれで乗った電車の車両、軽い気持ちで引き受けた仕事。分岐点に立っているとはとえも思えないほど小さな局面でも、その場における選択肢や行動が、当人のその後の人生を左右するようなことがあります。

そしてそこには、人との出会いという要素が大きく絡んでいます。

 

本書アイネクライネナハトムジークに収録されている6つの短編において,登場人物たちが見せた物語は、実は誰の人生においても起こり得ることだったりします。ありふれたシーンを切り取った話であるにもかかわらず、どの話もまるでドラマのようにキラキラと輝いて見えるのは、伊坂幸太郎の手腕でしょうか。あるいは気づいていないだけで、僕たちも本当はドラマのような世界に生きているのでしょうか。

 

個人的には第1編「アイネクライネ」において,語り部である佐藤に対し友人の織田が発した本当に幸せな出会いについてのセリフが印象的でした。確かに、となんだかじんわりした気持ちになりました。

 

今後、ぼくにはどのような出会いが待っているでしょうか。10代の頃と比べて、最近では一定の距離を保ったまま親しくなるケースが増えました。誰とでもある程度親しくはなれる一方で、お互いを信じ、すべてを晒け出せるほどの仲にまでなれる人とは出会えていない気がします。一生の友と呼べるほどの仲になれるような、そんな人と出会うチャンスはまだ残っているのでしょうか。

 

おっさんに残された出会いの場は、そのほとんどが仕事に絡んだものです。同じ業界にいる、似通った属性の人との出会いが多いように思います。同じ穴のムジナ同士ならば、親しくなれる可能性も高いのかもしれません。

 

一方で、自分の引き出しを増やしてくれるのは違う穴のムジナ。自分とは全く違う世界の住人と出会い、知らない世界の話を聞くことで、自分という人間の幅を拡げたいという欲もあったりします。

 

というか、楽しいんですよね。自分の知らない世界を見られるのって。いまの自分のことも、また違った角度から見つめる契機にもなりますし。

 

そして、子どもの存在は新しい出会いを親にもたらしてくれます。ママ友、パパ友、保育士さんや児童館の職員さん。いずれの方も子どもがいなければ出会うことのなかった人たちです。お店のおばさんや街行くおじさんなど、いろいろな人に話しかけられる機会も増えました。子どもの話で盛り上がり、いろいろなことを教えてもらったり、親しくなったりしたケースもありました。

 

何より我が子との出会いにこそ、ぼくらの人生は大きく動かされました。これまでとは違うものを見せ、違うことを考えさせてくれました。ぼくという存在は、子どもとの出会いによって親になりました。

 

「出会い」という言葉は、ポジティブな響きだと思いませんか。出会う相手が必ずしもいい人だとは限らないのに。それはぼくたちが、人と出会うことに前向きな期待をしているからではないでしょうか。人と出会うことを願い、それを喜ぶことができるからではないでしょうか。まだまだ人間、捨てたもんじゃありませんね。

 

これを読んでいるみなさんにも、うちの子どもにも、これからいい出会いがありますように。

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